帯広市 市民福祉部 こども福祉室 こども課 (北海道帯広市)
施設種別 自治体・公立施設
この事例の要約
今回は、市内の保育施設間にみられる保育ICTシステム有無の差異により、入所する施設によって発生してしまう「保護者のデジタル格差」をできるだけなくしていくことを目指し、公立保育所全所にコドモンを導入したほか、私立保育所への保育ICTシステム導入補助金交付やICT協議会による研修会等を通し、市全体として保育ICT化を推進している、帯広市市民福祉部 こども福祉室 こども課 係長の裏南さま(写真中央)と、ICT導入担当の守山さま(写真右端)に導入の経緯やその後の活用状況についてお話を伺いました。
裏南さま:帯広市としても保育ICTの必要性は十分認識していて、予算編成協議の中でもたびたびその重要性が議論になりました。ただ、「職員の事務負担軽減」だけに焦点をあわせた要求では、財源に限りがある中でなかなか予算化にいたらなかった、という状況でした。そこで、令和6年度の予算編成にあたっては、少し視点を変えて、保育ICTを導入することで、まずは「保護者の悩みや困りごとの解消につなげる」ということ、あわせて「保育士の事務処理負担の軽減も実現できる」ということ。そのことで、保育士が働きやすい環境を整え、保育サービスの質の向上につなげていくんだ、そういったストーリーで予算編成協議を進め、ようやく予算化することができました。
裏南さま:帯広市では、公立保育所は7所だけで、ほかの約30所はすべて私立の保育所なんです。私たちとしては、市全体でICT化を推進したいのですが、私立保育所に対して市が直接システムを導入するわけにはいきません。そこで、まずは公立保育所でシステムを導入し、あわせて私立保育所に対しても国のICT補助金を活用した導入支援を実施するための経費を計上しました。結果として、市全体の施策として予算化することができました。
裏南さま:はい。今は、公立保育所にコドモンのシステム導入を進めていて、私立保育所向けにも補助要綱を作成中です。これから本格的に、私立保育所向けにICT補助金を活用した導入支援をしていきたいと思っています。
裏南さま:要望以前に、ICT化は世の中の流れとして当然のことだと思っています。保護者との意見交換会も何度か実施しており、「早く進めてほしい」というご意見は一定数いただいていたので、ようやく今回お応えできそうです。
裏南さま:新しいことへの抵抗感は誰しもあると思うので、導入の段階で、ものすごい反発の声があることも覚悟はしていました。「えっ、困ります。紙の方がいいです」という職員も、結構出てくるのかなあ……と、想像したり。それぞれ思うところはあると思うのですが、現場の職員も変化をある程度受け止めてくれたのかなと感じています。
裏南さま:自治体として調達に必要な手続きを経た結果ではあるのですが、過去の記録を見てみると、令和3年の2月にコドモンさんが一度、帯広市に来てシステムのデモをしていただく機会があったようです。そのときに参加した保育士から提出されたアンケートでは「もしコドモンが導入できたら非常に助かる」と肯定的な声が上がっていました。結果的に、このときのシステムのデモが、数年を経て今回の導入につながった一つの大きなきっかけだったと感じています。
守山さま:基本的には、所長に窓口になってもらっています。日々、会議やメールで私から所長に「こういう形で進めたいです」と一つずつ共有しながら、導入準備をしていただくようにお願いしています。
守山さま:過去にコロナの時期にメールで保護者に一斉配信をしていたこともあり、わりとすんなり切り替えられていると感じます。管理画面も使いやすいですね。
(コドモンの「お知らせ一斉配信」画面イメージ)
守山さま:これまで保護者へのお知らせは、すべて紙でお渡ししていました。たとえば、私たち「こども課」の本部から送る場合は、紙で印刷したものを各保育施設に配って、保育施設がクラス分けした上でそれぞれの保護者に渡してくれていました。それが、今ではコドモンのボタンひとつでポンっと送れます。これによって、紙代・印刷代が減り、仕分けにかかる手間がなくなったのは、非常にわかりやすいメリットだと考えています。
また、保育施設からは、今まで白黒印刷で配っていた「保育施設だより」や「クラスだより」を、色がついた状態でデータ送付できるのが好評です。「紙の管理が大変だ」という声はもともとあったので、電子化できてよかったです。
守山さま:予算要求のときから重視している機能が3つあります。1つ目は「出欠申請」、2つ目が「登降園管理」、3つ目が先ほど話に出た「お知らせ一斉配信」です。
特に「出欠申請」には期待しています。これまで朝の時間帯、保育施設には電話がつながりにくく、出欠の連絡が難しいという課題がありました。コドモンを通じて出欠申請ができるようになれば、保護者は24時間いつでも連絡ができますし、保育施設での朝の業務負担も軽減されると考えています。
あとは「登降園管理」ですね。これまで手書きで管理・集計していたものが、すべて自動化できそうです。
守山さま:そうですね。あと、現場からは「写真販売」への期待感も耳にしています。保護者からの集金や取りまとめ、写真の整理が大変だと聞いています。コドモンを入れることにより、保護者も写真が選びやすくなり、保育施設も管理が楽になるのではないかと思っています。
守山さま:使える機能はどんどん使っていきたいのですが、いっぺんにあれもこれも始めるとどうしても現場が混乱するので、声を聞きながらちょっとずつちょっとずつ進めていきたいです。
本記事は前後編です。後編では、帯広市が私立保育所への導入促進のために、はじめて実施した「ICT協議会」の取り組みについて、実際に参加した私立園長の感想も交えてご紹介します。