今回お話を聞いた方
私が小さい頃、不安や寂しさに寄り添ってくれたのが保育園の先生だったからです。幼少期に保育園に通っていたのですが、当時はまだ保育園に通う子どもがまわりに少なかったこともあり、不安な気持ちでいっぱいでした。
そんな私を支えてくださったのが、当時通っていた園の先生でした。泣いていると温かく寄り添ってくれて、側にいるだけで安心できたんですよね。そんな思い出から、「私も将来、子どもたちに寄り添える素敵な先生になりたい」と思うようになりました。
その後、高校生のときにボランティアで子どもたちと関わる機会があり、保育のやりがいや素晴らしさを実感し、本格的に「この道に進もう」と決意したんです。短大で幼稚園教諭の資格を取得し、認可外の保育園で保育の仕事をスタートさせました。
24時間体制の保育園だったので、子どもたちの生活に深く関わることができました。子どもたちと長い時間を過ごせるのは、楽しかったですね。ただ、一緒にいる時間が長いと、どうしても「成長」や「教育」よりも「生活」に重きを置きがちで。それまで学んできたことを十分に活かせない歯がゆさも感じていました。もっと教育的な関わりを持ちたいという思いから、幼稚園への転職を決意しました。
はい。当時勤めていた幼稚園は、カリキュラムに沿った「一斉保育」が中心でした。担任一人で多くの子どもたちを見るため、一人ひとりとじっくり向き合う難しさを感じましたね。特に、自分から声を掛けることが苦手な子どもたちとは、どのように時間を取ればいいか試行錯誤しました。
幼稚園バスの出発後など、園児が少なくなる時間を見つけては話しかけるようにしていましたね。そんなとき、子どもたちは本当に嬉しそうな顔をしてくれるんですよ。そういった何気ない関わりの中で喜びを見出していきました。
結婚をきっかけに、幼稚園を退職することになったんです。子どもに恵まれてからは、しばらく家事と育児に専念していました。ただ、自分が子育てをしてみて、「子どもを育てるって、こんなに大変なことだったんだ」と実感したんです。同時に、「専業主婦の私がこんなに大変なのだから、働きながら子育てをする保護者はどんなに大変なんだろう」と思って。特に最初の保育園で働いていたときは、保護者の気持ちにきちんと寄り添えていなかった場面もあったかもしれない、と心が痛くなりました。
「もう一度保育の現場に戻れたら、子どもたちだけでなく、保護者にも寄り添える先生になりたい」と思い、子どもたちが3歳と5歳になったときに保育園でパートを始めたんです。
はい。保育園では0歳から子どもを預かるので、幼稚園教諭の資格のみではまだ発語がない子どもたちと関わるうえで、不十分かもしれないと思ったんです。
その頃は、毎朝3:00に起きて6:00まで勉強し、そのあとは子どもたちのお弁当作りと家事をして、子どもを幼稚園に送り出したら保育園で働き、仕事から帰ってきたら家事と育児をして……という生活を送っていました。
今振り返るととても大変な時期でしたが、子どもたちの発達について専門的に学べることは楽しかったですし、「今頑張れば、もっと子どもたちに寄り添った関わりができるはず」と信じて乗り切れました。
子どもたちの行動の意味を、より深く考えられるようになりましたね。「なぜ泣いているんだろう?」「なぜこんな行動をするんだろう?」と、発達の観点から想像できるようになりました。そうすることで、園児一人ひとりが求めていることに、より的確に応えられるようになったと感じています。
当時の保育園に通っていたのは、認可保育園の空き待ちをしている子ばかりだったんです。多くの子どもたちが、卒園する前に認可保育園に移ってしまう状況で、「0歳から成長を見守って、卒園まで見届けたい」という思いがずっとありました。
そんなときに、現理事長である当時の社長から「新しく認可保育園を立ち上げようと考えている」と聞いて。理事長も私と同じ思いを持っていたとわかり、なんだか嬉しかったですね。その認可保育園に立ち上げ期から関わり、現在も園長を務めています。
子どもたちの心の成長の瞬間に立ち会えることが、何より嬉しいですね。最初は自分の主張をぶつけるだけだった子も、徐々に相手の話を聞けるようになっていきます。「本当はこうしたいけれど、友だちのために譲ろう」「譲ったら楽しく遊べたから、他の子にも優しくしよう」と考えられるようになる。そんな成長の瞬間に立ち会えるのは、この仕事ならではの喜びです。
特に今の園では、0歳から年長さんまで、子どもたちの成長をずっと見守ることができます。卒園式のとき、「この子は2歳の頃はこうだったよね」「この子のお姉ちゃんのときはこうだったね」とこれまでのことを思い返して職員同士で話すんです。そんなときは、本当に感慨深いですね。「小学校ではどんな子になるのかな」と、子どもたちの未来を想像するのも楽しみのひとつです。
現場にいた頃は、子どもたち一人ひとりに向き合うことを重視していましたが、園長になると子どもはもちろん、ご家庭、職員など、向き合う対象が広がります。また、園長という立場は園にひとりしかいないので、悩みを共有できる相手が限られるのも最初は心細かったですね。
ただ、それ以上にやりがいが大きいんです。子どもたちが保育園を好きになってくれること、先生方が生き生きと働いてくれること。地域の方から、「この保育園の子どもたちは、いつも楽しそうだよね」という声をいただくと、本当に嬉しくなります。もちろん私ひとりの力ではありません。これまで、みんなで頑張ってきた甲斐があったと感じます。
保育士として働く中で、私自身、家庭と仕事の両立には何度も悩んできました。振り返ると、時代的な背景もあり、自分の子どもよりも、仕事を優先せざるを得ない場面もありましたね。子どもから、「私は子どもにさみしい思いをさせたくないから、保育士にはならない」と言われたときはとてもショックでした……。
だからこそ私が園長になったら、家庭を一番にできる環境をつくりたかったんです。例えば職員には、どんなに仕事が忙しくても、子どもが熱を出したらすぐにお迎えに行ってほしい、学校行事があるときは参加してほしいと伝えています。そもそも、家庭のあるなしにかかわらず、自分や自分の大切な人を大事にできる職場でありたいと思っています。
乳幼児期は人格形成の土台となる大切な時期だからこそ、責任の重さを感じることもあります。でもそれ以上に、小さな発見やつぶやきから子どもたちの成長を感じ、その成長を間近で見守ることができるとってもやりがいのある仕事です。子どもたちが将来社会に出たとき、保育園で遊んだり学んだりした経験が、その子の根っこになると信じています。
子どもの気持ちに寄り添える方はもちろんですが、それと同じくらい、「自分の気持ちも大切にできる方」だと思います。
私たちの園では「家庭を一番に」という考えを大切にしています。体調が悪いときは休む、子どもの行事には参加する。そうやって自分自身の生活も大切にしてこそ、目の前の子どもたちとも向き合えると思うんです。
子どもたちの未来が、もっともっと輝いていくように。保育の世界で、一緒に子どもの成長を支えていける仲間が増えることを願っています。
(取材・文:仲奈々、撮影:池田博美、編集:コドモン編集部)
関根先生が働いている園
施設名:西大宮青藍保育園
形態:認可保育園(80名)
設立:2018年
所在地:埼玉県さいたま市西区西大宮西大宮3-25-5
※2024年12月17日時点の情報です
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