人を信じて助け合って生きていけるよう「基本的信頼感」を育てたい【廣本祥子先生】

すてきな園長先生

今回お話を聞いた方

廣本祥子(園長)
出身地:大阪府大阪市
職歴:幼稚園→アパレル系→認証保育園→認可保育園
園長先生歴:2年
趣味:マッサージに通うこと

子どもだけでなく保護者にも寄り添う存在でありたい

保育において大切にしていることを教えてください。

今年の園の目標にもしているのですが、いつも「助け合いと思いやり」を大切にしたいと思っています。

人それぞれに得意なこともあれば、頑張ってもできないくらい苦手なこともありますよね。誰かの苦手を「なぜできないのか」と怒ったり責めたりするのではなく、許しあったり、補いあったりできるのが理想だと思っています。何かをできない人がいれば、できる人が知っていることを教えてあげて、必要なら手も貸してあげる。そうすれば、教えるほうも教わるほうも成長できるのではないでしょうか。

たしかにそうですね。先生にも「苦手」と「得意」がありますか?

もちろん! 私の苦手なことは掃除や片づけです。油断すると、デスクの上が散らかってしまって……(笑)。園の事務書類などの整理整頓では、他の先生や用務員の先生にも助けられています。一方、私の得意なことは、他の人とコミュニケーションをとることでしょうか。

保育の仕事のどんな部分にやりがいを感じますか?

子どもたちと一緒にいろいろな体験をするなかで、さまざまな発見や感動を共有し、成長していく姿を間近で見られるところです。こうして貴重な一瞬一瞬を噛み締められる職業って、なかなかないと思います。

また、子どもの成長を保護者のみなさんと共有・共感できるところにもやりがいを感じています。保護者の方が子どもの成長に不安を感じているときには、「こんなことができましたよ」などと伝えると喜んでくださって、子どもも褒められて嬉しくなりますよね。すると、さらに保護者の笑顔が増えて、子どもも……こうして親子の関係性がよりよい循環になるようお手伝いできる点もやりがいがありますね。

子どもだけでなく、保護者にも目を向けられているんですね。

私は日々子どもだけではなく、保護者の方とも十分なコミュニケーションをとりたいと思っています。「髪、切られました?」「お仕事はお忙しいですか?」などと、まずは気軽に声をかけて、日頃からざっくばらんに話せる関係をお互いに築いています。そうした心がけが功を奏して、子どもの発達についての相談で立ち入ったことを話しても受け入れてくださることが多いように感じます。

保育士は、保護者の方に「指導」をする存在ではありません。私たちは、それぞれの子どもにとってよいと思う「選択肢」をたくさん出し、保護者に寄り添いながら一緒に考えていくだけ。あくまでも縁の下の力持ちなのです。子どもをずっと育てていく保護者が、自信を持ってまたポジティブに楽しみながらお子さまと歩んでいけるようにする、これが私の目標です。

反対に、保育のどんなところが難しいと思われますか?

いつも難しいと思うのは、保育における価値観はそれぞれで、正解がないところです。自分の中の「これがいい」という考えは、他の人にとっての正解ではありません。ですから、園の方針をどう共有していくかというのは大きなテーマです。先生たちのしたいことも汲みつつ、だけど子どもの権利を損なうことがないように、ということを考えています。

保育から離れたとき「子どもたちとの絆」が恋しくなって

廣本先生が保育士を志したきっかけを教えてください。

私自身が幼稚園児だったときの担任の先生がとてもやさしかったのが、最初のきっかけです。今では考えられないことですが、昔の幼稚園や学校には「給食を食べ終わるまで帰れない」というルールがあることも、めずしくありませんでした。当時、私は給食の時間が苦手でなかなか食べられず、みんなが帰ってからも居残りをすることに。そのとき、担任の先生が何も言わず、ずっとそばにいて励ましてくれて安心しました。先生みたいになりたくてピアノを習い始めたほど、先生が好きだったんですよ。

保育士資格は、どこで取得されたのでしょうか。

保育士資格は、短大で幼稚園教諭の資格と一緒にとりました。これには実は母の後押しがあったんです。

私の母は、子どもにやさしく寄り添ってくれるタイプ。口うるさくもなく、干渉しすぎることもなく、ただ静かに見守ってくれました。そんな母が、私が進路に迷っていたときに「あなたはピアノが得意だし、子どもが好きで面倒見もいいし、幼稚園や保育園の先生になったら自分のいいところを生かせるよ。幼稚園の先生が大好きだったでしょう」と。このアドバイスが決め手になって、最初は幼稚園教諭として働き始めました。

実際に働いてみて、どうだったのでしょうか?

子どもたちと接するのは楽しかったのですが、最初は仕事自体に慣れないのと、その園では高度なスキルが必要なのとで、ついていくのに必死でした。園長先生を尊敬していたので、なんとか3年は頑張りましたが、結局は退職することに……。私には幼稚園教諭は向いていないのかなと自信を失って、いったんアパレル関係の仕事に就きました。

その後、保育の仕事へ戻られたのはなぜでしょうか?

もともと洋服が好きで、ものを売るときにもコミュニケーションはつきものなのでアパレルの仕事は楽しかったのですが、やっぱり子どもたちとの絆が恋しくなって、保育の仕事に戻りたいと思うようになりました。

そんなとき、たまたま以前勤めていた幼稚園の同期の先生が今の保育園に誘ってくれ、すぐ入職することに。浄土宗の寺院が運営する園で慈悲の心を持つ方が多いためか、包み込むようなあたたかさとやさしさを感じました。

「あたたかい園」だと、子どもも保護者も安心できますね。

以前、卒園した子のお母さんが、下の子のお迎えに来られたときに、私の顔を見た途端に泣かれたことがありました。事情をうかがってみると、小学1年生になった上の子が慣れない学童へ一人で行ったのを心配されていたんですね。「初日だから心配になったかもしれないけれど、子どもはたくましいし、すぐに慣れていくから大丈夫ですよ」と伝えました。

すると、「この園に一歩入ると、すごくあたたかい雰囲気で安心するんです」と言ってくださって本当に嬉しかったです。

人から人にしか伝えられない「あたたかさ」を伝えたい

園長になられたきっかけを教えてください。

前園長が退職されたので、経験年数が長く、他の先生からも推薦があったということで、私にお話をいただいて引き受けました。私は、今の園で保育士から園長になっているし、周囲と年齢も近いので、あまり園長という感じがしないかもしれません(笑)。

園長として大切にされていることは何でしょうか?

子どもは未来を担う存在で、その基盤は乳幼児期にあります。日々の生活、活動や遊びなどを楽しく繰り返す中で、基本的な生活習慣などを身につけることが大事です。

でも、一番は人から人にしか伝えられないあたたかさを知って、他人や自分を信じることができる「基本的信頼感」を得ることが大切だと思っています。知恵や知識はそのあとでも大丈夫ですが、人を信じられないとつらいことが多くなってしまうからです。人との関わり、安心感、信頼感をしっかり育ててあげたいと思っています。

また、子どもたちと先生が一つのクラスですから、先生たちも大切にしたいと思っています。私が先生や職員の素晴らしいところや努力を見つけて褒めたりねぎらったりーーそういうポジティブな行動を大切にすれば、それは先生を通して子どもたちにも返っていくと信じています。

今後の目標を教えてください。

今後は、「子育て支援」を充実させていきたいです。まずは保護者向け。例えば、土曜日に保護者のための「子育てサークル」を開催し、お母さんやお父さんのちょっとした心配や悩み、不安などの解消をお手伝いして、さらに子どもと楽しく過ごせるよう支援していけたらと思っています。

次に、そうした活動を地域へ広げていけたら。卒園児も、小学生になると環境が大きく変わるので、園に遊びに来られる日をつくるとホッとできると思いますし、職員も子どもたちに再会できるのが楽しみになると思うんです。今目の前にいる園児だけでなく、子どもたちが大人になるまで長く見守れるようなシステムができたらと思います。

保育士になりたい人へメッセージをお願いします。

保育には大変な面もありますが、子どもたちという無限の可能性を秘めた存在と過ごすことで、人として成長できる仕事です。周囲と協力して保育をすることで、より人に感謝できるようになりますし、一人じゃないという安心感やあたたかさを楽しめたらいいんじゃないかな。さらに自分が保育した子どもたちが成長し、日本の将来を担っていくと思うと、未来がもっと楽しくなると思いますよ。

(文:大西まお、撮影:谷根千写真館、編集:コドモン編集部)

廣本先生が働いている園
施設名:蓮美幼児学園 第2とよすナーサリー
形態:認可保育園(87名)
設立:2009年
所在地:東京都江東区豊洲3-5-3

※2024年12月10日時点の情報です

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