今回お話を聞いた方
気づいたらなっていた、という感じですね(笑)。実は当初は、ここまで長く保育の仕事を続けるつもりはなかったんです。結婚して子どもができたら、仕事を辞めて自分の子は自分で育てたいと思っていました。
でも、出産後家族と相談し、会社にもたくさん配慮してもらい復帰することを決めて、保育園に子どもを預けることになって。いざ預けてみたら「素敵な保育士さんが、本当にたくさんいるんだな」ってわかったんです。仕事が大変な中でも、いつも笑顔で子どもたちに接してくれて、私が育児で困ったときには、主任の先生や担任の先生がすごく親身に相談に乗ってくださり、保護者として、保育園にとても救われたんです。
この経験から、私も自分の園の保護者の方々に「この園を選んでよかった」と感じていただける素敵な先生になりたい、と思うようになりました。そんな思いでここまで保育を続けてきて、気づけば園長になっていました。
私自身、保育園で育ち、自分より小さい子の面倒を見たり、一緒に遊んだりすることが当たり前の環境で成長しました。振り返ってみると、小学校の卒業アルバムにも「保育士になりたい」と書いていたんですよ。
卒園後もしばらく両親と当時の担任の先生との間で年賀状のやり取りが続いていて、保育士になることを決めたときは、「頑張ってね」と励ましの言葉をかけていただき、就職内定の報告したときは、とても喜んでくださったことを覚えています。年賀状だけのやり取りでしたが、そういった温かい応援も励みになりましたね。
高校選びの時点で、保育科のある学校に進学することを決めていました。普通科の学校も考えてはみましたが、自分が本当に学びたいと思ったのはやっぱり保育だったので。高校生のときは、夏休みにボランティアで保育園のお手伝いをしたり、母親の友人が働いている園でお世話になったりしました。
そういった体験を重ねるうちに、「私はこの道に進んでいくんだな」という実感が、より強くなっていきましたね。
最初に就職した園は、体操教室、器楽・和太鼓教室、絵画教室、リトミックなど、さまざまなカリキュラムがある認可保育園だったんです。通常の保育をしながら、そのような新しいことを学んでいくのは正直とても大変でしたね……。
特に苦労したのはピアノです。私は高校からピアノを習い始めて、まだ日が経っていなかったこともあり、日々の保育の中で子どもたちが歌う曲のピアノ伴奏や発表会で求められるレベルについていくのがとにかく大変でした。早くから担任を任せてもらえたのは嬉しかったですが、苦手なピアノも含めてすべて自分でなんとかしなきゃいけない……という不安や焦りも感じながら、とにかく必死でした。
そんな中で先輩たちからは「とにかく、自分ができることを探して一生懸命やりなさい」とアドバイスを受けました。当時は先輩から叱られることもよくありましたが、一方でつらいときは一緒に泣いて寄り添ってくれたり、行事などが成功したときは一緒に喜んでくれたりしました。
私は新しいことを企画するのが好きで、新任の頃からさまざまな研修に行かせていただき、宿泊研修にも参加させていただきました。そこで学んだことをひとつでも多く保育に活かしたくて、色々提案させていただいたんです。当時まだまだ未熟だった私の話に耳を傾けて、「やってみなさい」と背中を押してもらえたことは、本当にありがたかったです。あの頃の経験は、今も私の宝物で、保育の仕事を続けるうえで原動力になっています。
そうですね。新任で2歳児を受け持ち、卒園まで担任として見届けることができたときは、感無量で胸がいっぱいになりました。そのときの達成感は言葉では表現できないほどで、20年以上経った今でもその子たちの顔はもちろん、出席簿の名前順や誕生日も覚えているくらいです。
はい。結婚が決まっていたので、短期間別の保育園で働きました。その後、転居し現在園長として働いている法人が運営していたナーサリールーム(当時認可外保育園)に就職したんです。
新設園でしたが当時から、保育士の意見を尊重してくれる環境でした。やりたいことがたくさんある私にとっては、すごくやりがいもあり、楽しかったですね。例えば、行事を企画するときは、保護者に子どもたちの日々の細かな成長を感じていただくため、親子で楽しめるものにしましたし、親子遠足や保育参観などを開催したりもしましたね。
そして何より、保育士が全力で遊び、一緒に楽しむことを大切にしてきました。子どもたちが毎日楽しく、安心して過ごせるかどうかは、長時間一緒に過ごす保育士との関係にかかっていますから。
私たち保育士が、目の前の子どもの気持ちに寄り添って接することです。もし目の前にいる子が泣いていたら、その子の泣きたい気持ちに寄り添うことから始めて、「子どもは泣いて当たり前」ということを職員間で共有しています。特に入園したばかりの時期は、大好きなお母さん、お父さんから突然引き離され、はじめての場所においていかれる不安な気持ちは計り知れません。だからこそ、ここは安心できる場所、楽しい場所なんだとわかってもらえるように全力をそそいでいます。
「1歳児の発達についてこう書いてあるから」といった固定観念ではなく、「そもそも、この子たちはまだ生まれて1年しか経っていないんだから…」ということを常に意識しています。大人だって、「できるけど、なんとなくやりたくない」「今は気持ち的に頑張れない」というときはありますよね。子どもの泣きに惑わされず、子どもの気持ちに寄り添い、しっかり向き合うためにも、時間に追われることなく、保育者自身が心に余裕とゆとりを持つことを大切にしています。
例えば給食のときに、泣いてご飯が食べられない子がいたら、まずはその気持ちに寄り添います。椅子に座ることを急かさず、抱っこをしたり、膝に座ってもらったり。そうやって少しずつ私たちが関わり方を変えながら、子どもたちが安心できる環境を整えていくことを大切にしています。
職員が保育の現場を守ってくれているから、私は園長を続けられています。だからこそ、職員にとってより働きやすい職場環境をつくっていきたいです。
例えば、私は職場を一歩出たら、仕事のことは考えずに家族の時間を大事にしたい。同じように、職員にもオン・オフの切り替えができるようにしてほしいと思っています。だから、必要な業務連絡やシフト変更以外は、時間外の仕事の連絡はしないなど、プライベートの時間をしっかり確保できる環境を少しずつ整えているところです。オフがしっかりあれば「今日も頑張って仕事しよう」と思えて、力も湧いてきますからね。
まずは、今の園を継続していくことですかね。子どもの数が減っていく中で、私たちのような小規模保育園の運営はさらに厳しくなっていくはずです。保護者に選んでいただくためには、園のよさを継続して発信していく必要があります。そして発信のためには、まずは園長である私ができることを増やしていきたいです。他の誰でもない、私らしい園づくりにチャレンジしていきたい、と思っています。
保育の仕事に興味があるけれど、「仕事が忙しい」「給料が安い」といったネガティブな口コミを見て躊躇(ちゅうちょ)している方もいるかもしれません。でも、私は「保育業界が気になる」と思った当初の気持ちを、まずは大切にしてほしいと思います。実際にその業界に入ってみないと、わからないことはたくさんあります。それが自分にとってプラスかマイナスかも、やってみないと分かりません。
私自身、長い保育士人生で大変なことはたしかにありました。でも、それ以上に楽しいこと、嬉しいこともたくさんあったんです。辛いことも嬉しいことも経験したからこそ、今は胸を張って「保育業界こそが私の居場所だ」と言えます。どんな経験もどんな出会いも、すべて何かの意味を持つはず。だからこそ、自分が「気になる」と思うのなら、周りの口コミに惑わされずにまずは一歩踏み出してみてください。
(取材・文:仲奈々、撮影:岡村大輔、編集:コドモン編集部)
湯本先生が働いている園
施設名:森のなかま保育園 武蔵浦和ルーム
形態:小規模認可保育所(19名)
設立:2018年
所在地:埼玉県さいたま市南区鹿手袋4-31-17
※2024年11月26日時点の情報です
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