福島県磐梯町教育委員会 教育課・こども課 (福島県磐梯町)
施設種別 自治体・公立施設
成果 保護者からの評判UP事務の省力化手書き業務の削減保育・教育の質向上
この事例の要約
乳幼児から義務教育終了までのすべての公立保育・教育施設でコドモンを導入した日本初の自治体となった福島県磐梯町。2020年に保育所でコドモンを導入したのを皮切りに、翌2021年3月に幼稚園、こども館(幼稚園降園後に子どもたちを預かる施設)、児童館(学童)へ、さらに2022年2月には幼稚園を卒園するタイミングで保護者の利便性が落ちないようにと小中学校へも展開を進められたそうです。また、今後は、母子保健担当部局でもコドモンを導入し、定期検診や予防接種についてのお知らせもコドモンで受け取れるようになる予定だそうです。
全公立保育・教育施設での導入をサポートした磐梯町教育委員会 教育課の穴澤主査と保育所での導入と他施設への横展開にあたり尽力された磐梯町保育所の副所長・園部先生に、連絡帳の打ち込みに苦労したという導入当初から今までのお話をうかがいました。
穴澤主査:保育所のあと、幼稚園、こども館、児童館への導入までは考えていました。
全体で一斉スタートすると、いろんなトラブルが一斉に出てくるのではないかという不安もあり、使用頻度や子どもの預かり時間の長いところから…ということで、まずは子どもといちばん長く接する保育所からはじめました。
保育所で運用方法がわかったところで横展開し、幼稚園、こども館、児童館へ導入しました。
小中学校に導入範囲を拡大したのは、二つの目的があります。一つ目は、小学校にあがるタイミングで、就学前に保護者へ提供していたサービスが途切れてしまわないようにということ。二つ目は、これまで町内の公立小・中学校では、保護者向けのメール配信サービスを使用していましたが、双方向のシステムを導入することで学校事務の省力化にもつながると考えたことです。文部科学省からも「学校・保護者等間の連絡におけるデジタル化の推進について」という通達が出ていた部分になります。
特に、小中学校でも保護者連絡のICTシステムとしてコドモンを導入することで、保護者からすると保育所〜中学校まで、施設との連絡が全部ひとつのサービスで済むという形がとれます。これはかなり大きなメリットだと感じています。
穴澤主査:幼稚園や保育所などでは、人事異動で職員が他の施設にいくときに、同じシステムを使っていると、どこの施設でも同じ作業ができるので負担軽減につながっています。
一番メリットを感じるのは保護者からの連絡です。保育所、幼稚園、こども館、児童館、小・中学校と、子どもがどの施設に所属していても、また違う施設に所属するきょうだいがいてもワンストップで施設とやりとりできるというのは大きいメリットとして捉えています。
穴澤主査:令和元年(2019年)に佐藤町長が就任した頃から、磐梯町ではDXの推進を打ち出しており、町民にとってより良いサービスをデジタルによって実現する方法を模索していました。保育現場においても同様です。
2020年前半頃はまだ保育施設において保護者連絡をICT化するということ自体が一般的ではなく、今ほど選択肢も多くはありませんでした。その中でも、コドモンのサービス内容や料金体系がイメージしやすく、保護者サービス向上と事務の省力化が図れるのではないかと思い、コドモンの導入を園部先生に提案しました。
園部先生:保育所では、先生のなかにご自分のお子さんの通っている園(となりの会津若松市)で写真販売や連絡帳がスマホでできるという話を聞いていました。当園では、写真も連絡帳もICT化をしていなかったので、コドモンでは両方使えるのがいいな、と思っていました。
紙の連絡帳は子どもが帰るまでに全員分書き終えないといけませんし、保護者さん、職員ともに毎日の負担は大きいんです。保護者さんも電話での出欠連絡に苦手意識を持っている方もいらっしゃいますし、連絡を取れる時間帯が広がる形になりますので、コドモンを導入したことで連絡はだいぶしやすくなったと思います。
園部先生:最初は、連絡帳と写真をやりたいねと話していたのですが、写真販売は写真の撮影・保管方法や、保護者の購入方法が大きく変わります。そのため、保護者連絡、連絡帳から少しずつ広げていって、次に帳票管理、そして今年度ようやく給食管理や写真共有・販売まで使うようになりました。写真販売は年に2・3回なのですが、写真を選んで、印刷したものを貼りだして、保護者に注文してもらって、それをまた集計して印刷して配布して……と一度につき1か月半くらいかかる大変な作業でした。数か月分を一度に販売するので、量も膨大でしたしね。
写真の販売をコドモンでできるようになって、ずいぶんラクになりました。
機械が苦手な先生もいるので、導入当初は苦手な先生が使いこなせるかは不安がありましたが、逆に得意な先生もいるのでうまくフォローしあいながら、今では同じように使えるまでになりました。
苦手な先生は、まず文字を打ち込むことに不慣れなので、連絡帳を書くのも園児1人分を担当するところからはじめてもらい、徐々に打ち込む園児数を増やしていきました。得意な先生は打ち込むのも早いので、最初の頃は苦手な先生の分も入力してもらっていました。
また、最初のころは入力した先生と別の先生が確認するフローを入れていたのですが、今は入力した先生が自分で確認して送信まで担当してもらっています。
連絡帳の配信時間を18時と決めて運用しているので、子どもが帰ったあとに入力することができたのもよかったですね。最初は1人分の入力からはじめた先生も、今は負担なく使えているようです。
いちばんはじめに全職員へのサポート研修もありましたし、少しずつ試しながら使えたのもイメージを掴みやすくてよかったです。
穴澤主査:導入前からコドモンの担当者の方にまめにサポートいただけたのもよかったですね。ヘルプデスクの電話対応もよいですし、マニュアルも充実しています。
園部先生:現在、帳票は園で元々使用していたオリジナル帳票も使いつつ、指導案や個人票などはコドモンの様式でやっています。
それまで使っていた帳票とコドモンの様式が違うので、どちらを使用していくか、というところは迷いました。コドモンを使っている園に視察にいったり、いろいろ試した結果、コドモンの様式にあわせるのがいいのではないかということになりました。
長く勤めている人こそ、使っている帳票に慣れているから変わることに抵抗があるのではと感じましたが、コドモンの帳票を使うメリットを伝えることで職員も納得のうえで移行することになりました。
園部先生:まず1つ目はデータの連携の部分ですね。これはコドモンの様式を使うといちばんメリットが高まります。全体的な計画に入力したことが、例文として月案に出てくるので、計画を立てる上でのヒントになります。
2つ目は、コドモンに最初から登録されている文例が勉強になること。これまで本を3冊も4冊も広げながら計画を立てていたのが、コドモンの文例が本の代わりになるので、本は1冊あれば十分ということになりました。五領域や十の姿が具体的な文例になっていることで、曖昧だったことが学べます。
また、本に書いてあることを書き写すよりも、すでに入っているものを自分たちの考えでアレンジするほうがより広がるということもあり、職員も納得してくれました。
またこの時点で、連絡帳を通じて入力への抵抗感が薄れていたこともよかったのではないかと思います。
それから、学びという点では、コドモンカレッジの研修も活用しています。見逃し配信があるのがいいですよね。職員が全員で同じ時間に参加することはできないですし、聞き取れなかったところをあとで見返したりもできるので便利です。
園部先生:そうですね。園内での活用はさきほどお話しした通りで、苦手な職員も使えるようになり連絡帳の負担はかなり軽減されました。クラスでの共通の取り組みや活動など、今まで手書きで一人ひとりに書いていた同じ活動についての説明をコピーできるのは、時間がないときにはとてもありがたいです。
保護者からの評判という点では、やはり「スマホで見られるのがいい」という声を多くいただきました。紙の連絡帳だと、朝登園するまでに書かないといけなかったのが、職場に行ってからでも送れる。夜寝る前に打ち込んでおくこともできる。そういうのがいいとおっしゃっていました。また、連絡帳に写真を入れていることで保育の様子や取り組みがこれまで以上に伝わるようになったと思います。
穴澤主査:横展開していくにあたっては、初期設定をどうしているのかと幼稚園の先生が保育所に視察に来たり、園部先生にデモをしてもらったりという形でイメージをもって導入していただきました。保育所では導入に半年ほどの準備期間がかかりましたが、幼稚園では3か月、小中学校はさらに短い期間で導入できました。
穴澤主査:施設が変わったタイミングで、運用の違いに戸惑うことはあるようです。保育所では写真つきで毎日連絡帳を送りますが、幼稚園や小学校では人手の問題もあり対応が難しくなります。
ただ、月齢が進むにしたがって、施設の種別ごとに保護者さん、お子さんとの接し方も変わっていきます。そこはそれぞれの施設ごとに運用を決めていますということで方針をご理解いただいています。現状、かなりいい形に落ち着いてきているのではないでしょうか。
写真販売も保育所ではじめたことをきっかけに、ほかの施設でも保育所から情報を得ながら活用をはじめています。こうした連携もいい方向に進んでいます。
穴澤主査:学校のほうでは、コドモン導入以前はメールでお知らせするシステムを利用していました。コドモンになって1年が経過しますが、メールだと受信ボックスのなかでほかのメールに埋もれてしまうのですが、アプリにお知らせが直接届き、データが蓄積されていくことで、おたよりを探す手間が減る、情報がきちんと伝達されると聞いています。
実は私も小学生の子どもがいるので、保護者として使っている立場なのですが、とても便利です。
また、若い方は保護者でも電話に抵抗ある方が増えているので、朝の連絡も電話よりコドモンで送るほうが心理的な負担が少なくていいという話も聞きますね。
園部先生:そうですね。安全管理の面から、コドモンに連絡が入ってなかった家庭には、こちらからご連絡するようにしているのですが、みなさんすぐにコドモンから連絡を入れてくださいます。個別にお知らせしたい時や複数にお知らせしたい時は、今まで電話連絡や各家庭にお話しをしていましたが、お知らせ配信で個別に連絡し、配信先が確認できるため連絡漏れがなくなりました。
園部先生:さきほどお話ししたように、連絡帳に写真を添付しているんですが、最初は「写真を撮りながら保育をするってどうなの?」という懸念の声もあり、無理して撮影せず、1枚入れられるといいよねくらいの感覚ではじまりました。それが今では、「今日あまり撮れていなかったな」と気づいたら、すぐに撮影したり、思っていた以上に先生たちが抵抗なく写真を撮りながらの保育ができるようになりました。
それがだんだんと、表情がいいね、行動がいい……など少しでも「いいね」と思ったら、すぐに記録として写真で残すという意識が醸成されてきました。意識が変わった、という感覚があります。保護者にも写真を通して伝わるものがあったようで、「写真がよかった、こういう風に遊んでいるのがわかるとうれしい」という声をいただいています。写真があると、文章が短くても伝わるというのもいいことですね。
また、活用が進んで便利になった点としては避難訓練など、毎日ではない取り組みのときの情報共有があります。これまでは訓練の予定などをコピーして各教室に貼り付けにいっていたのですが、コドモンに入力して「今日はこうやってやるよ」と伝達するとすぐにみんなで確認できます。
ヒヤリハットもコドモンを使うようになり、共有しやすくなりました。紙で運用していたときは、まとめたファイルを職員室に見に行かないと見られませんでしたが、コドモンだといつでも手元で確認できて便利です。
園部先生:そうですね、日々のお迎えなどでもお話しをいただくことがありますが、コドモンのアンケート機能で施設評価を行った時に寄せられたものもありました。
保育に関するアンケートだけでなく、コドモンの使い方についても保護者に意見をうかがっています。例えばおたよりの配信については紙がいいか、コドモンだけでいいか? といったことや、写真販売をコドモンですることの保護者の意向を確認したり。
コドモンのアンケートのいいところは、誰が回答していないかわかる点です。回答期限が近づいてきたらリマインドして回答してもらうので、回答率がかなり高まります。
穴澤主査:保護者の利便性があがり、施設の負担が減り……自治体としての導入目的は達成できているという認識ですが、現場としてはどうでしょう?
園部先生:4月から給食管理も本格的に利用をはじめます。いま、週に一度くらいのペースでサポートいただきながら準備を進めているところですので、まずはこの給食の本格活用ですね。保護者への献立写真などの情報提供、食べた量の共有をしていきたいと思っています。
写真の販売のペースや、連写して撮影した写真をどのように選別したらいいのか、全部アップロードして保護者に選んでいただいたらいいのか……といったところはまだ運用が固まっていないので、保育者の負担を減らせる運用方法を見つけるのが次に実現したいことです。あと、コドモンを使っているなかで「もう少しこれができたらいいな」という要望もありますので、フィードバックを伝えながらこれからも活用を深めていきたいと思います。