沖縄県国頭郡伊江村立 東保育所、西保育所
施設種別 自治体・公立施設
この事例の要約
沖縄本島からフェリーで約30分の位置にある伊江島全体で構成される沖縄県国頭郡伊江村。ペーパーレス化の一環として、村内の2つの保育所(東保育所と西保育所)で2021年からコドモンを導入し、保護者との連絡および写真の販売、帳票作成に活用いただいています。
コドモンを導入した自治体本部との連携と保育現場での活用について、両保育所の主任である比嘉先生と天久(あめく)先生に、うかがいました。
比嘉先生:伊江村役場の福祉課では、さまざまな書類のペーパーレス化を進めており、その一環として保育ICTが検討されたと聞いています。保育においては、毎月保育所やクラスのおたより、保育所や行政から保護者へのお知らせなど、文書の配布にかなりの予算が使われていたそうで、そうした課題を解決したいというねらいがあったのだと思います。
天久先生:今コドモンでは、登降園の打刻、お知らせやアンケートの配信、保護者からの連絡、おたより帳、月案の作成、写真共有・販売で活用しています。お知らせ一斉配信、アンケートは私たち主任がやっていて、各クラス担任がおたより帳、健康チェック、月案の作成をしています。
比嘉先生:台風での休園といった緊急連絡や、伊江村役場が主催する両保育所の卒園式、入園オリエンテーションの案内などは、保育所を介さず、伊江村役場の福祉課から直接保護者に配信してもらっています。今までは、所長が文書を作成し、福祉課長に確認後、保育所にて一枚印刷し、村役場へ印刷依頼に行き、再度受け取りに行き……ととても時間がかかっていました。今は文書さえ決まれば、両保育所の保護者が同じ内容を共有でき、また台風での休所等の対応も、福祉課長の判断が下るとすぐに保護者に配信できて助かっています。
比嘉先生:まずはどういう機能があるのか、どういったことができるのかというシステムに関する疑問と、職員の共通理解を得ながら進めていくためには、どう説明して進めていけばいいのかなあと考えました。
天久先生:「コドモン」については、村外の園で働いていた職員から聞いたことがあったので、私たちにどこまでできるのかなあと思いました。
比嘉先生:離島ならではの状況かとは思うのですが、村外からきた人が、また村外に戻ってしまうことも多く、ここ10年弱くらいで保育所の人材確保が以前より難しくなっています。そこで保育所運営にあたっては、退職されたOBの先輩にお手伝いいただいているという状況があるので、システムを入れてOBの方と情報共有ができるのかなという不安もありましたね。
天久先生:保護者連絡やおたより帳(連絡帳)をやりたいと思っていたけど、すぐには案内せずに、まずは私たち主任とコドモン担当の職員同士でどんな感じになるのかを確認して、自分たちで性能を理解してから進めていきました。
比嘉先生:一つひとつ、使ってみては様子を見ながら広げる感じですよね。最初は登降園の打刻だけを保護者にやってもらうところからはじめました。打刻の習慣がついて、令和4年度からコドモンのおたより帳(連絡帳)を導入しました。
比嘉先生:はい。現場でいえば、いちばん課題感が大きいのは「おたより帳」(連絡帳)でした。伊江村の両保育所で使っていた「おたより帳」(連絡帳)は、業者に依頼して作ってもらっている専用のものでした。それ以前は、ページをコピーして画用紙で表紙をつけて…と手づくりでやっていたので、業者に依頼するようになってラクになった面はあったのですが、業者につくってもらうと今度は広い保管場所が必要で、管理が大変でした。
比嘉先生:伊江村では、2か年幼稚園の取り組みがあり4.5歳児は幼稚園、0~3歳児は保育所というふうに分かれています。幼稚園でもコドモンを導入していることから、今までのやり方に慣れ、コドモンの打刻やおたより配信などに抵抗を示している保護者には「幼稚園でも導入しているので、コドモンに慣れてもらいたい」ということを伝えました。
新たに入所する方は、説明会で「コドモンを導入しています。成長記録やおたより帳(連絡帳)は、アプリで見られます」と伝えると「便利ですね」と、スムーズに受け入れていただいています。
天久先生:手書きのほうが…という保護者はスマホをあまり触らない方でした。そういう方だけ少し時間はかかりましたが、今は全保護者に浸透してきたかなと見ています。
保護者からは「写真がうれしい」という声をいただいています。コロナ禍で保護者が園舎に入れず、ほかの子どもと遊んでいる様子やお部屋の様子がわからない状態だったので……。
比嘉先生:「指が乾燥していてタッチパネルが反応してくれない(笑)」とおっしゃっていたOBの先輩も、家庭からの連絡一覧ページを開いて「ここの連絡見てください」とお願いしたり、全部まとめてではなく要所要所でお願いしたりすることで無理なく使えています。
また、現場での導入効果としては、慣らし保育の期間に「おたより帳(連絡帳)係」が不要になったことが大きいです。
新年度、慣らし保育の期間は、まずは1時間、2時間…と少しずつ預かり時間を延ばしていくのですが、コドモン導入以前は1時間のあいだに急いでおたより帳(連絡帳)を書く係がひとり必要でした。今は、お迎えのときに「おたより帳(連絡帳)はあとから送信しますね」とお伝えし、午睡の時間にゆっくり書けるようになりました。その分、1時間しかいられない子どもたちに手も時間もかけてあげられるようになりました。
天久先生:両保育所でコドモンリーダーを1人たてて、その職員と主任、それから役場の担当の方の5人で、どうやって進めていくかを勉強しながら進めました。「ここはどうしたらいいんだろう?」と疑問が出たときは、そのメンバーで話し合って、まずは試してみて、「こんな機能があったよ」「こんなこともできるみたいだよ!」というやりとりをしていました。
比嘉先生:保育所間での人事異動、幼稚園との人事交流もあり、職員は同じ保育所にずっといるわけではないので、コドモンの担当職員は年度ごとに変えています。最初の年は保育所全体を見られるひとがいいと思い勤務年数の長い先生に、次の年はパソコンの扱いに慣れている先生にお願いしました。担当になると、どんな機能があるのかと試してみたり、コドモンを上手く利用しようという気持ちが職員から出てくるので、そういう職員が増えることでよい効果がでていると感じます。
天久先生:あとはマニュアルを見ながら、写真を入れておたよりを作るなど挑戦しました。
比嘉先生:いまはコドモンの様式でやっていますが、最初は、それまで伊江村でつかっていた様式をそのままコドモンでやってみたいと試行錯誤したり調べてみたりしましたが、やっぱりちょっと難しいよねとコドモンの様式にしました。月案を入力しようとすると例文が出てきて月案作成の省力化にもなっていて、結果的によかったと感じています。
天久先生:帳票の例文については職員の間でも「これがいいよね」と話しています。以前は参考書を見ながらパソコンで打っていたものを、コドモンの例文から選んで自分の言葉に書き換えていくということができるようになりました。
比嘉先生:次は週案もコドモンでできるようになりたいですね。
比嘉先生:伊江村役場で採用されている保育士は、幼稚園教諭の資格も必須となっていて、保育所と幼稚園では人事異動もあるので、交流する機会も多いです。保育所で採用されて、一緒に働いていた先生が幼稚園にもいますし、コロナ禍で回数は減っていますが、3歳児が幼稚園に遊びにいく交流会もあります。
コドモンに関しては、幼稚園では登降園打刻と出欠連絡、お知らせ一斉配信でのおたよりの配信と写真ダウンロード、たまにアンケートを使っています。交流もあって話をする垣根が低いので、同じシステムを使っているからこそですが、使い方を聞かれたときには保育園、幼稚園でお互い連携もしています。
天久先生:写真共有・販売ですね!
これまでは写真を販売するとなったら、2日くらい午睡の時間をつぶして、クラス担任が写真屋さんの機械を占領してプリントして、保護者に申し込みをしてもらって、集金して、お金の計算をして……本当に業務の負担になっていると感じていましたので。
比嘉先生:保護者連絡も大変助かっています。朝の受け入れから9時頃までは保護者も保育者も忙しい時間ですし、この時間に電話がなくなったことでほかの保護者への対応がきちんとできるようになりました。
運用の課題として、欠席の詳しい理由を送ってきてくれる保護者もいれば、「熱・休み」という保護者もいたりと情報の粒度がまちまちだということがあります。どういう風に連絡いただきたいのかを周知していかなければと思っています。
天久先生:いえいえ、まだ全然機能を把握しきれていない、使いきれていないと思っています。これからやりたいのは、「おたより帳の製本」(連絡帳製本)ですね。コドモンから送っていただいた見本をみて、こんな風に手元に残せるならやりたい保護者もいるでしょうし。
比嘉先生:こうして紙で残せるということで、日々のおたより帳(連絡帳)を詳しく書こうかなという保護者の意欲にもつながるのではないかと思っています。
あとは、コドモンカレッジの研修ももっと活用できたらいいな、と思っています。