富山県南砺市教育委員会 教育部こども課 (富山県南砺市公立保育所)
施設種別 自治体・公立施設
サービス 登降園管理請求管理保護者連絡帳票作成シフト管理給食管理バス運行管理保育ドキュメンテーション
成果 保護者からの評判UP先生の残業削減手書き業務の削減電話対応業務の削減保育・教育の質向上先生間のコミュニケーション改善
この事例の要約
富山県南砺市の公立保育園は、12園同時にコドモンを導入し、1年も経たずにほとんどの事務業務をICT化して省力化をはかり、現在は保育の質向上に向けて保育ドキュメンテーションの活用を始めています。
コドモンの導入に至った経緯と全園でのスムーズな導入となったポイント、保育の質向上に向けた取り組みや保育士の働き方について、南砺市こども課の石崎様と公立保育園12園の園長会の会長を務める、城端さくら保育園の谷戸(たんど)園長にお話を伺いました。
石崎様:こども課では、妊娠期からの子育て支援、そして誰一人取り残さない子育て支援を目標に、大きく三つの事業をはじめています。
まず一つ目は、昨年からはじめた保育園業務のICT化、コドモンの導入です。
二つ目は、子育て支援アプリ「なんとHug」の活用で、今年度4月から開始しています。妊娠・子育て中に、必要な情報が必要な方に、必要なタイミングで届けられる他、悩みやお困りごとを保健師に気軽に相談し一対一でやりとりできる仕組みや交流掲示板の機能もあり、市内に住む親御さんのワンオペ育児の不安やコロナ禍での子育ての不安を和らげたいと考えています。文字のみのやり取りだけでなく、電話や訪問をするなど個別に最適な対応を考えられる体制をつくっており、妊娠届時に妊婦さんにアカウントを登録してもらい、妊娠期から相談できる体制を整えています。
三つ目は、南砺市全体で取り組んでいる子どもの権利条例づくりです。令和4年の策定に向けて本格的に始動しており、市民も参画し、大人だけでなく子どもの目からも子どもの権利条例の意義を捉え、南砺市らしい権利条例の策定に向けて動き出しました。
石崎様:1年前のこの時期(2020年7月頃)にこども課で保育園へのICTシステムの導入の検討を始めました。その背景には、将来的に保育士の働く環境の改善をしないといけないという課題がありました。“将来的”に と考えていたので、ICTもすぐに導入ではなく検討から始めていこうと考えていたのですが、それが緊急の課題に変わった一番のきっかけは新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響ですね。
石崎様:急務だったのは、コロナ禍での緊急連絡体制を整えることでした。もともと公立12園それぞれで緊急連絡体制はありましたが、コロナに関する事項は普段よりもさらに緊急性が高く、各園内の連絡だけでなく、市のこども課から全園へいち早く同じ・正確な情報を伝えるという体制を整える必要があるのではないかと考えたのが大きなきっかけでした。
そうした状況の中で、たまたま届いたDMではじめてコドモンを知り、面白い仕組みだと思ったのと同時に、自治体での導入数トップということに大きな信頼と魅力を感じて検討を進めました。もちろん現場の園長先生にも意見を聞きながら進めましたが、園長先生方もコドモンの実績とこども課への信頼を寄せてくださり「これなら!」ということで前向きに進められました。
谷戸園長:もともとあった園の連絡体制は、LINEグループでやりとりしているケースや、手紙での配布、電話連絡、園での掲示など園の規模に応じてさまざまでした。近隣で熊が出たことや行事の延期・中止のお知らせ、コロナの影響による登園自粛など、特に急ぎの場合には電話での連絡をしていましたが、保護者全員に連絡が行き届くまでには時間と手間がかかっていました。そのため、コロナが蔓延しだした頃から、一斉にお知らせを配信できる体制を整えて欲しいと園側からもお願いしており、そんな矢先にこども課からコドモンの話がでたので「ぜひお願いします!」と満場一致でした。
石崎様:一年前の今頃は、ICTの導入をどうやって進めようかと構えていましたが、今現場では各部屋にタブレットがあって、保育ドキュメンテーションを使いこなしていますよ。そんな保育士さんたちの姿を見て私も感動しています。
石崎様:いくつか他社のICTシステムも見てみましたが、知れば知るほどコドモンのシンプルな使いやすさを実感しました。やはり自治体での導入No.1という実績に勝るものはないですね。
もともと南砺市では、どこかの一園ではじめてみようという考えやモデル園をつくって検証をしてから進めようという考えは一切なく、12園全てで一緒にスタートする体制を整えたかったんです。市内の公立園はもともと全園がネットワークで繋がっていたのでその技術的な部分をすぐに利用することができましたし、情報セキュリティの部門が気にしていた個人情報の取り扱いやセキュリティ体制も、コドモンなら多くの自治体で実績があることから信頼できると感じました。導入実績は大きな安心感に繋がりましたね。
コドモンを導入するときに、市の内部ではサポート体制をとても気にしていました。何かトラブルがあったらコドモンの人が現場に来てくれるのか、実際に足を運んでくれるサポートはないのかという声もありました。電話のサポートだけでは私も正直なところ不安があったのですが、すでにコドモンを導入している近隣の県や岐阜県山県市の担当の方に連絡をしてコドモンのサポートについてお話を伺ったところ、「電話でのサポートでも、現場からは困ったという声は聞かない」と聞いて安心しました。
実際にコドモンの活用が始まってみて、こんなに親切丁寧なサポート、わかりやすいサポートだったんだと実感しています。導入後は、わからないことがあれば各園から直接コドモンのサポート窓口に問い合わせるようお願いしていましたが、何百人という園児の情報の中から一つのミスを見つけたり、こちらがうまく説明できないことも汲み取って、理解してサポートしてくれるので安心しています。先日は、コドモンの導入を検討しているという別の県の方からも同じように「コドモンはどうですか」と聞かれましたが、真っ先に「サポート体制がすごくいいですよ」と伝えました。
谷戸園長:公立園なので保育士は異動があります。異動する度に園ごとに違うやり方では仕事がしにくいので、統一できる部分は統一していきましょうというのを、もう何年も前から園長会等で話し合い、業務マニュアルなども一律にするなどしています。ですので、今回のコドモン導入もやるならスタートラインは一緒に。大型園も小規模園も同じように大事ですし、どこかの園だけでという考えはもともとありませんでした。
石崎様:保護者に対しても、どの園でも同一の保育サービスを受けられるようにしたかったんです。南砺市のどこに住んでいても同じサービスを受けられるというのは市民サービスの基本だと思うので、公立園ではどこの園でも保育士が同じように働ける、どこの園に通っても保護者は同じ保育サービスを受けられる、ということは大前提にしていたので、12園同時での導入しか考えられませんでした。
谷戸園長:ICT化に反対する先生はいませんでしたが、不安に思う先生は中にはいました。そもそもどういうものかよくわからない部分もありましたし、使いこなせるか不安もありました。もちろん私も不安はありましたが、頼れるこども課の職員もいますし、乗り出した船だからやってみよう!と前向きに進めていこうと思いました。
石崎様:もちろんいろいろな意見はありましたが、園長会の会長である谷戸園長が12園をしっかりまとめてくれていましたし、やるからにはやろう!と引っ張ってくださって、12園の園長先生方のチームワークを感じました。わからないこと、不安なことも先生方が助け合うように情報を共有して、学び合っていらっしゃったなというのをすごく感じます。現場の先生方も熱心で、積極的にコドモンのサポートを活用していました。
谷戸園長:保育料の計算や職員管理、写真販売、献立配信以外の事務作業はすべてコドモンをベースにしています。
仕事の仕方は本当に変わりましたね。帳票関係はすべてコドモンでの管理にしたので、持ち帰り残業がゼロになりました。
ある日職員が休み明けに「私、休みに日誌を書かなくてはいけないと思わなくなりました」と報告してくれたんです。以前は休みの日に家で日誌を書かなくてはいけないと思っていたようですが、コドモンでの業務だとそもそも家に仕事を持ち帰ることはできないので、業務時間の中できちんと終わらせられるようになったんです。コドモンを使うようになって、気が付いたら家で仕事ができなくなっていたというのが正直な感覚なのですが、でも家でやらなくて済むようになったのは一番大きいメリットですし、本来の姿ですよね。
石崎様:それはつまり働き方に対する意識の改革ができたということだと思うんですよ。土日に仕事ができない環境をつくることで、本来の月~金曜日で働く意識になった。その中で仕事をするという意識に自然となったんですよね。
谷戸園長:タブレットを配布した担任の先生たちは若くて、操作も楽しんでいて覚えるのも早いんですよ。本当に使いこなしています。私が若い先生にわからないことを聞きに行ったり、これはどうしたらいいんだろうと相談すると、若い先生は「園長先生に教えられることがある」と感じるようで、自分のお母さんに教えるように丁寧に教えてくれるんです。そのおかげで職員との距離は縮まっているのではないかと感じています。
石崎様:保育園の現場は、日案・週案・月案などありとあらゆるものが全て紙ベースだったので、担任の先生が持っているデータ、園長先生が持っているデータがそれぞれにあり、集約されているものがない状態だったんです。それが、コドモンでの帳票管理になって、コドモンを通じて同じ情報を共有できるのはとてもいいですよね。
今年秋にはコドモンを導入してはじめての監査を予定しています。事前に県に確認したところ、コドモンなら画面確認でいいですよと言われていますので、紙の印刷はなく、監査もペーパーレスで乗り切れそうです。
谷戸園長:使いはじめたばかりの頃は、添付ファイルの形式を間違えて送信して見た目が崩れてしまい保護者から指摘してもらうこともあったのですが、最近はそうしたミスもなくなりました。送迎のおじいちゃん、おばあちゃんたちには最初はなかなかコドモンで打刻していただけず苦労するかと思ったのですが、それでもお見かけするたびに丁寧に教えていたところ、すぐに慣れてくださり今ではスムーズです。
保護者からは、紙の配布物がなくなって便利になったので、保育園だけでなく小学校でもコドモンを使って欲しいという声を聞きますし、保育ドキュメンテーションで子どもたちの様子を配信するようになってからは、写真で子どもたちの様子が見られて嬉しいという声ももらっています。コロナ禍で今保護者は園の中に入れず普段の子どもたちの活動を見られないのですが、写真で様子を知ったり、子どもと一緒に写真を見ながら園でどんなふうに過ごしたか話すことができると喜んでいただいています。
石崎様:2020年12月からコドモンのアプリを通じて保護者への緊急連絡の配信をはじめました。コドモンを使い始めることを案内する際、本当は保護者に集まってもらいこども課から説明会をする予定でいたのですが、この状況下で説明会ができず、文書で案内したんです。「いきなりこんなものを入れるのか!」「アプリを使うなんて反対だ!」という声が挙がったらどうしようかと本当に不安だったんですが、実際に案内をしたところ、反対や不安の声は本当に一件もなかったんです。初めて聞く「コドモン」「ICT化」というものを、文字だけでどこまで理解してくださるかなと不安だったのですが、保護者と園との関係ができているから、園でやることにも安心してくださるのを感じました。公立は1,300人ほど園児がいるんですが、「いやです」という声は本当に誰一人なかったんです。
保護者からは、「家族で情報共有できるのがいい」と聞いています。単身赴任のお父さんとも写真が共有できるし、遠方のおじいちゃん、おばあちゃんとも共有ができる。なにより働いている親御さんが、おじいちゃん、おばあちゃんが子どもをお迎えにいって家に帰ったという降園の通知が届くので、家族の無事を確認できて、仕事をしながら家族の様子を知れるのもいいですよね。コドモンの利用に対する保護者の反応がよく、そうした保護者の声が市の議員さんにも届き、いい取り組みですねとお声をかけてもらいました。
谷戸園長:コドモンでは利用施設向けのWebセミナーがたくさんあっていくつか参加しているのですが、大豆生田先生の「保育の質の向上に繋がる」というお話から保育ドキュメンテーションに興味を持ってぜひ使ってみたいと思い、トップダウンでやると決めて、少しずつですが活用をはじめています。
最初は一週間に一回、保育ドキュメンテーションを使って文章だけで送ってみよう、次は写真付きで送ってみよう、というように始めて、今は一週間に1~2回写真付きで送ってみましょうというように少しずつステップアップして使っています。まだ使いこなしているところまではいきませんが、保育士も私たち園長も、保育の質向上に向けてこれからも勉強しながら取り組んでいこうと思っています。
谷戸園長:保育ドキュメンテーションの機能だと写真に添えられる文字数が決まっていて、それが私はいいと思っています。長文でつらつらと書いても読む側には伝わりにくいですし、せっかく写真から場面を想像できるので、簡潔に添えられる言葉を考えて書いてほしいとお願いしたところで、先生たちも意識が変わってきました。写真を撮ることに慣れていなくて「いい場面なのに写真が撮れなかった」と悔しそうに報告してくれる職員もいましたので、子ども一人ひとりを意識して保育をする余裕ができてきたのかなと思っています。
石崎様:福光どんぐり保育園ではいい使い方をしていましたよ。子どもたちの活動の写真を先生たちがタブレットでお互いに見せあって、「この場面でこの子はこうでした」と共有して、学びの時間になっているのだなと感じました。
大規模園では学年で2つ・3つとクラスがあって、子どもたちは他のクラスのお友達が何をしているか知りません。先日はコドモンの記録をクラス同士で見せあって「〇〇組はこんなことをしていたんだね」「△△ちゃんはこんなことができるんだね」と保育士が子どもたちといっしょに見て会話をしていました。普段見られない隣のクラスの遊びを知って、子どもたちも「あんな遊びができるんだね。今度やってみよう」と刺激を受けている様子に、コドモンをフル活用できているなと感じました。先生たちもこうした生(なま)の記録を残そうと意識しているようで、バッグにタブレット入れて持ち歩いているようです。
谷戸園長:もともとコドモンを導入したきっかけが保育士の働き方改革なので、コドモンを使うことで残業のない保育園にしたいと思っています。保育の質の向上という面では、保育ドキュメンテーションを使って保育士が子ども一人ひとりの発達を捉えて、どういう保育を展開していけばいいかを考えて実行できる保育士になってほしいと思っています。子ども一人ひとりを見つめることができる力をつける保育園であってほしいなと思っています。
石崎様:こども課の思いとしては、保育士が本当にやりたいことができる環境になってほしいと思っています。というのは、職員管理、勤務管理、帳票管理、臨時職員の管理など、本来の保育ではない事務的な負担が大きくなってしまっているからです。
本当はもっと子どもと関わっていてほしいのに、事務作業が増えたために、本当にやりたいことができない環境になってしまっているのではないかと、こども課はずっと懸念しているんです。ですので、コドモンを通して非常に煩雑な職員の勤務管理の省力化も実現して、より事務業務の負担を軽減していければいいなと思っています。
(取材協力)
・富山県南砺市こども課
・公立保育園 12園