長野市役所 こども政策課 (長野県長野市)
施設種別 自治体・公立施設
この事例の要約
長野県長野市には86の学童施設があり、登録・利用している児童数は8,700名にものぼります。導入前はICTシステムに不慣れな現場職員からの反発の声が大きかったそうですが、導入後は一転。スムーズに使え、全施設で入退室の管理レベルが全体的に上がるとともに、職員の業務省力化、保護者の利便性向上も実感でき、現場からも支持されています。
多くの施設、職員、児童、保護者がかかわるなか、運用が定着した背景を、長野市こども政策課 原山課長補佐、青沼係長に、現場での運用について浅川子どもプラザの木村施設長、関谷支援員にうかがいました。
こども政策課:こどもの安全と保護者の安心のため、入退室管理をシステム化するのが一番の目的でした。
検討を開始した当初は入退室管理をシステム化することだけを考えており、電子タイムレコーダーについて調べていたのですが、調べていくなかでコドモンでは入退室管理にくわえ、保護者とのコミュニケーションにも使えること、それでも予算内で導入できることがわかってきました。さらに業務省力化の効果も高そうだと、付加価値の高さ、費用対効果の高さから考え方が変わっていきました。
保育・幼稚園課ではすでにコドモンの導入が決まっていたので、システムの検討はコドモンを中心に行いました。いくつか比較したなかで、「学童もコドモンにしよう」と決めた理由は大きく3つあります。
1つ目はインターフェースの見やすさや、操作のしやすさです。学童施設の現場では、パソコンなどのスキルが低い職員も多く、ICT導入への抵抗も強かったため、「カンタンに使える」ことがなにより大切だと考えました。
2つ目は、入退室の打刻にQRコードが使えること。比較検討した他のシステムの打刻では、ICカードが多く、QRコードによる打刻が選択できるコドモンは、あらゆる運用に対応できると感じました。
当市では、主に1、2年生が使う施設、3年生以上が使う施設と校区内に2つの施設があるところも多く、そうなるとICカードによる打刻だと、職員側の管理も煩雑になります。
また、子どもたちにカードを持たせて「なくした、よごした、割れた」となった場合に、ICカードを再購入するとなるとその費用は? 実費を保護者からいただくのか? 現金をいただいた場合のその管理は? など全86施設で統一するとなるとあれこれ問題が出てきます。
QRコードであれば紙に印刷するだけですので、再発行もカンタンですし、施設数・利用者数が多い当市においてはかなり大きなメリットだと感じました。
3つ目は、すでに長野市内の保育・教育施設においてコドモンの導入実績が高かったことです。保育・幼稚園課で導入を決めていたことはもちろんですが、多くの私立保育園でもコドモンが使われていました。これは、未就学児の保護者の多くがすでにコドモンのアプリを使っているということです。そうなると市民目線で見たときに、学童のためにわざわざ違うアプリを入れるのはわずらわしさがあるはずですし、操作方法が同じアプリの導入が望ましいと考えました。
こども政策課:そうですね。パソコンが苦手な職員も施設には多くいらっしゃいます。ですので、コドモン上でやる作業が多くなりすぎると運用が難しいだろうなと思っていましたし、「システムを入れると仕事が増える」や「今までのやり方を変えたくない」などの反発の声も耳に入っていました。浅川子どもプラザでは、実際にどう感じていましたか?
浅川子どもプラザ:パソコンに関しては不慣れで、かなり抵抗感がありました。「難しいんじゃないの?」と思っていたのですが、やってみるとそんなに複雑なことはありませんでした。毎日使うデイリーボード、入退室管理、保護者連絡など、どれも使いやすいです。打刻のミスがあったら修正することもあるのですが、その操作もわかりやすく、今のところ問題なくできています。
こども政策課:直感的に使いやすい、迷うところがないという点でコドモンはほかのシステムと比べても優れていました。パソコンの操作に不慣れな方が多いという前提で、そこを重視して検討したので、現場で問題なく使えてよかったです。
浅川子どもプラザ:現場として操作以上に不安だったのは、QRコードの管理をどうするかという点です。
職員が児童の入退室にあわせて打刻をするのか、子ども自身に打刻をさせるのかかなり悩みました。いまは、児童の名札の裏にQRコードをつけて、その名札を施設の入り口にある名札ホルダーに置いています。
来室したらまず、子どもがそこから自分の名札をとって打刻し、そのまま名札をつけて入室。帰るときにまた名札をはずして打刻し、ホルダーに戻すという運用です。
名札をつけて活動するので、落としてなくしたり、いじって汚したりするんじゃないかと心配していましたが、スムーズに運用できています。
1年生でも問題なく打刻できていて、心配しすぎだったなと思いました。
こども政策課:幼稚園、保育園で使われているので、保護者が打刻する様子を見ていた子が多かったのもよかったんじゃないでしょうか。打刻の操作をはじめて見るという子の方が少なかったように思います。
こども政策課:打刻の運用は完全に施設にお任せです。浅川子どもプラザのように、QRコードを名札につけてカードホルダーで管理する施設もありますし、子どもに完全に持たせてカバンにつけている施設もあります。86施設あり、規模も条件も環境もそれぞれ違いますから、施設としてとりたい運用方法も当然違います。
こども政策課では、規模の大きさごとに先行導入施設をいくつかピックアップして、入退室用カードの運用や、入退室管理などをテストしながら全施設での運用方法を検討したのですが、あとは施設間のコミュニケーションのなかで情報交換をして、「うちではこういう運用をしている」「この運用はやりやすそうだ」と自分たちの施設にあわせて運用をつくりあげてもらっています。
浅川子どもプラザ:QRコードを名札につけるというのは、ほかの施設でやっていたのを参考にしました。さらに当施設では、子どもに打刻させているのですが、そのときに職員がかならず児童の顔と名前が一致しているかを確認するようにしています。
たまにカードを間違えて打刻する子もいて、そうなると来室していない子の保護者に通知がいってしまうので…。職員が顔を見ていることで安全管理も一層強化できますし、もし誤って打刻をしてしまっても保護者に対してすぐに誤りであることを連絡できます。お知らせ一斉配信の個別配信で誤打刻ですとお伝えしたり、お電話したりしています。そのあと、その打刻情報を「鉛筆マークを押して修正」しています。この操作もわかりやすいです。
こども政策課:現場からの反発の声はすぐになくなりました。スムーズに使えたことで、意識が逆転したのではないでしょうか。「利用実績報告書の作成業務がなくなり楽になった」や「お知らせを一斉に配信できて保護者連絡が楽になった」などの声をいただいています。
「うちは最低限しか使いません」といっていた施設も、蓋を開けてみたらアンケートを使いはじめたり、児童のグループ分けをしていたり、運用レベルがあがってきている施設が増えています。
保護者へのアプリ登録の依頼に関しては、こども政策課以上に現場のほうが積極的に動いてくれたと感じています。それだけのメリットを、現場は感じたのではないでしょうか。
浅川子どもプラザ:保護者にとってもメリットはあると思います。日々施設を利用している児童の保護者は100%コドモンのアプリを入れてくださっていますよ。保護者としては必須のアプリとなっています。子どもが打刻をすると通知がくるので安心という声はいただいています。
毎日通うのではなく、曜日によって利用している子どもが、来室する予定だったのに間違えて家に帰ってしまったということもあったので、プラザについたという通知は保護者にとって安心につながります。
当初は、メールとアプリの両方で通知がくるのがわずらわしいという声もあったのですが、通知を片方にする設定も保護者側でできるのでそれをお伝えしました。そこまで自由に設定できるのも便利ですよね。
浅川子どもプラザ:連絡帳です。個人でひとり1冊連絡帳を用意していただき、来室したら子どもが連絡帳を出します。表紙に連絡内容の有無を確認できるようにし、必要な連絡帳だけを確認すればいいように、できる限りの効率化をしていましたが、出席した子どもが全員連絡帳を提出しているかを、出席簿と照らし合わせて確認する作業は大変だったので、この手間がなくなったのはかなりの省力化です。併せて、子どもが来室する前に連絡内容を確認できるようになったので、時間を効率よく使うことができ、施設職員は子どもに向き合う時間を増やすことができました。
また、来室の予定については書面で毎月マルをつけて提出してもらっていたので、こちらもコドモンで管理できるようになり、集計なども手間なくできるようになりました。
最初は戸惑いの声もありましたが、保護者も操作になれて今は定着しており、スムーズに申請できるようになっています。
こども政策課:コドモンの導入にあたっては、「施設の事務負担を減らす」という約束があったので、実感していただけて、お約束を果たせたと安堵しています。このほかにも、利用実績がカンタンに集計できるようになったのも大きいのではと感じていますがどうでしょう?こども政策課としても管理がしやすくなっているのですが。
浅川子どもプラザ:利用実績報告ですよね。それは大きかったですよ。毎月、月末になると担当者が入力・作成していたのですが、その作業が全部なくなりましたから。そうした時間分、子どもたちに目を向けられるようになっています。
こども政策課:実は、本部のほうで各施設のアカウントに入れるという点でもすごく重宝しています。例えば施設から問い合わせがきたときに同じ情報をみて話すことで、話が伝わりやすく、齟齬がなく理解できるようになっていますし、本部から施設の編集作業をサポートすることもできます。こういう効果は期待していなかったので、「ここにも付加価値があったのか!」と思いましたね(笑)
浅川子どもプラザ:現場では、長期休みしか利用しない子の保護者にもおたよりや施設の情報を出せるようになり、直接的ではないにせよコミュニケーションが増えました。それまでは手渡しできるご家庭にしか伝えられなかったので。日々ご利用されていて、既読マークがつかないおうちには、「おたより出てるので見てくださいね」と声掛けもできるので、既読機能も便利です。
そうそう、あとはお誕生日!デイリーボードでお誕生日の子どもにはマークが出るので、職員が児童に声がけすることで、コミュニケーションが深まっています。これも予想外の付加価値ですね。
こども政策課:「長野市版FAQ」を作成し、運用に関する細かい質問を一覧にして配布しました。コドモンの操作以前のところで、たとえば先ほどお話があったような「打刻ミスがあったときに、保護者に連絡する」ということや、タブレット自体のトラブル解消について、一斉にお知らせするためにつくりました。施設数が多いからこそ、よくある質問、運用として決めたほうがいいことを取りまとめたという感じですね。
コドモンにもサポートがあるので、操作については施設からコドモンに直接問い合わせができるようコールセンターの利用についても周知していたのですが、コドモン単体での使い方というよりも「この場合はどういう対応をするのか」といった、長野市としてどう運用するのかという質問が多かったため、「長野市版FAQ」の必要性を感じて作成しました。
浅川子どもプラザ:毎日使うところについて重点的に書いてあったので、とても参考になりました。
こども政策課:それはよかったです!コドモンの担当さんには、現場はもちろんですが、私たちも大変お世話になりました。使いはじめもですし、はじめての学年の繰り上げの処理など、これだけの施設数がありながら期限内にできたのは、サポートがあってこそのことだと感じています。
あとは、利用申請の保護者アプリの活用について、コドモンでご用意くださっている保護者向けのマニュアルのほかに、長野市独自での通知も作成しました。
(長野市こども政策課作成のアプリ利用についてのお知らせ)
こども政策課:はい!いちばんの目的であった入退室管理の徹底は、全施設でできるようになりました。「きちんと入退室管理をしてください」とお伝えしても、日々の安全管理の意識レベルや体制等にも差があるので、なかなか同じようには揃いません。過去に事故がなかったのはよいことなのですが、「今までのやり方で大丈夫」と過信してしまっている方もいたと思います。
今回のICTシステムの導入により、その安全管理の意識レベルや体制を全体的にボトムアップできたと感じています。こちらとしても、時間帯別の利用実績が即座に把握できるようになり、より子どもの安全を守る体制が強まりました。
浅川子どもプラザ:当施設では手書きのときも入退室の管理は徹底してやっていました。大切なお子さんをお預かりしているのだから、きちんとしないといけないと思います。ただ、いろいろな施設があるなかで、どこでも同じように安全を確保できるようにこうして自治体でいろいろやってもらえることが、子どものそばにいる立場からはうれしく思います。
こども政策課:入退室管理の全施設での統一、それによる意識の向上、さらに保護者への連絡手段の確保と当初に想定していた以上の整備ができたことは、本当によかったです。
今後は、利用実績のデータ分析やアンケート機能を使った保護者への意向調査を行い、サービス内容の検討に活かしていきたいです。